ブルーノオト

国内バスケットボールをメインフィールドに活動中。フリーのライター/編集者、青木美帆のブログです。

ひとり上手

大学生から20代前半にかけて、月1頻度で大切な行事があった。長距離列車に乗って知らない土地に行き、2、3泊くらいかけてふらふらと歩くことだ。

 

1人で歩く。1人で眺める。とにかく1人きりで何かを見たり、聴いたり、食べたり、触ったりして、その中で時々ひっかかるものについてゆっくりと考える小さな旅。こういう時間を過ごすと、凝り固まっていたものがほぐれるというか、問題は何も解決していないけれどそれに立ち向かう気力が充電された気がした。本当に大切な時間だった。今でも1人でいる時間は苦でないし、旅先や移動中の車内で同行者にしゃべりかけられることは、一貫してあまり好きではない。

 

たぶん、物書きの種の見つけ方も同じだ。ふとしたしぐさ、言葉、表情、ひっかかったところからすべてが始まる。ついでにいうと、特に練習見学が大切なきっかけなんだろうな、ということがわかるようになった。練習を見ることが好きだ。たぶん、誰も相手をしてくれなくても一日中平気で見続けられる。

 

傍観と観察。昔はほぼ妄想みたいなものだったけど、さまざまな人との出会いのおかげで、洞察力につながってきているような実感もある。 

 

敬愛するスポーツライティングの大先輩が、こんなことを言っていたそうだ。

"凝視した時だけいい質問が出てくる"

弛緩からの緊張。俯瞰からの凝視。集中力。描写力。現実世界を見る目はよくないけど(こないだ眼鏡を作り替えたら度が4段階上がっていて、ビン底眼鏡が手渡された)、違うものを見る目の視力はうまいこと向上させたい。そのためにも、今日も今日とて1人でぼんやり考える。

 

(大学生のころ、友人宅の熱帯魚を数時間眺めつづけていたことがあった。あれはたぶん病気だったのだろう)

 

【今回の1曲(2曲)】

youtu.be

若者はオザケンを知らないそうだ!なんということだ!!

 

youtu.be

やたらと電車からの風景とマッチすることと岸田さんが電車好きなことは密接に関連していると思われる

セッションの愉悦(FUTURE BOUND CLASSIC 2017)

日曜日は「FUTURE BOUND CLASSIC 2017」を見に行きました。 

平たく言えば、神奈川、大阪、埼玉の高校オールスターが5対5の総当たりで戦うエキシビジョンマッチです。

 

futureboundclassic.com

 

この取材をしたとき、安達くんから「今年、俺らが出るんです」と教えてもらったので、3年間取材でお世話になった神奈川の高校3年生を見られる最後のチャンスだと、随分前から予定を空けておきました。会場は家から自転車で行ける距離だし、さらに都合がいい。ところがどっこい、持っていない女・青木は2試合しか見られませんでした。道に迷ったからです。

 

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私の迷い方(1cm=200m縮尺)。たぶん2時間くらい迷っていた。

 

女子のエキシビジョン(東京の高3女子×一般のストリートボールチーム)と最終試合の神奈川×大阪はまるまる見られましたが、みんなとっても楽しそうでした。神奈川は埼玉、大阪に勝って優勝。おめでとう!

 

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メンバーは田代幹(桐光学園)が選抜したとのこと。安達虎太郎(アレセイア湘南)、和田麗空、寒川光太、小澤雅也(以上東海大相模)、戸井堅士朗(法政二)、奥山喜理人(厚木東)、古賀森人(横浜、以上敬称略)。"マスコット"と紹介されていた左端の彼の素性は聞き忘れました。

 

大学生がストリートボーラーと対戦する「somecity NIGHT COLLEGE」しかり、今回のイベントしかり、競技バスケにどっぷり漬かっている選手がストリートボールに出会う瞬間は、いつ見ても楽しいものです。規律やルールに則った競技バスケに慣れている彼らが、勝手がわからずまごまごしていたところから次第に自由にプレーできるようになっていく。その過程に、いつもわくわくします。

 

例えば今回MVPを獲った安達くんや和田くん。

http://futureboundclassic.com/post/157172368974/shake-and-double-clutch

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http://futureboundclassic.com/post/157172651552/dont-try-to-block-me-im-dunkin-on-you

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競技バスケでの全国的な評価や実力は現段階では高くありませんが、ストリートボーラーとしては全国レベルで猛烈に光っています(やるな、神奈川)。MVP次点としてこっそり副賞をもらっていた田代くんも、自チームではなかなか発揮できない1対1をガンガン仕掛けられて、ものすごく楽しそうでした。

 

somecityのオーガナイザーをつとめるTANAさんは、よく「ストリートは遊び」と言います。私は、学生時代にかじっていたジャズピアノを思い出し、「ストリートはセッションだな」と感じました。コード進行やアドリブを回す小節数、決めるタイミングなど最小限の決まりごとを作ったら、あとはその場にいる仲間同士で自由にやる。言葉を使わず、音とリズムだけでじゃれあったり、戦ったり、1つになったりする。うまくハマったときの気持ちよさは、楽器を離れた今でも忘れられません。

 

大好きなジャズピアニスト、上原ひろみさんのセッションをば。

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NBAの選手たちも、オフには度々、幼少期を過ごしたストリートコートで汗を流すと聞きます。学生さんたちは日々の練習で忙しいとは思いますが、時にはチームウエアを脱いで、自分の中に眠っているひらめきや創造性、本能を思い出しにコートに出かけてみてほしいなと感じました。

戦友(Standard神奈川vol.14)

告知が遅くてもはや告知の意味をなしていませんが、「Standard神奈川」の最新号、発売中です。(目次はこちら、購入はこちら

 

この号ではバスケ特集の第1部の男子インタビュー、第2部の桐光学園、選手権特集の星槎国際湘南(女子サッカー)、ダンス特集の金沢総合の記事を担当しました。今号も楽しい取材ばかりでした。

 

毎年の恒例となっているバスケ特集ですが、今年はちょっと変化球企画をば。新人戦に挑む1,2年生への3年生からのメッセージをプロローグとして構成しました。男女それぞれで掲載していますが、男子はさらに変化球。法政二の美濃口くん(この記事に出てくる「泣きべその彼」が美濃口くんです。うちの息子を最もよく見ているレアな高校生でもあります)、アレセイア湘南の安達くん、東海大相模の寒川くんの、幼なじみ3人組のストーリーとしました。

インターハイ予選の最終日、法政二鈴木先生から「3人が新横浜のストリートコートでよくプレーしている」という話を聞き、ふくらませたら楽しそうだなと思っていた企画のタネ。バスケ号は新人戦特集だし3年生モノは無理だろうな思いつつ、企画会議でおそるおそる編集長に話すと「面白いじゃん」ということになり、掲載が実現しました。

中学時代は市の2,3回戦で負けて、県選抜なぞ箸にも棒にも引っかからなかった3人。そのうち2人が県を制して全国大会に行き、3人全員が県4強の主力となれた原動力は何だったのか。悩み多き下級生たちへのエールの意味も込めて、ざっくばらんに話してもらいました。スタンダードでは珍しく4ページ構成でしたが、それでも全然収まりきらないくらい、たくさん話してもらいました。(安達くんがシンヨコに国体のウエアを着てきて全員ドン引きしたとか、いろいろこぼれ話もあったのですよ)

 

男の子というのは基本、あまり細かい連絡を取り合わない生き物のようです。彼らも試合会場で言葉を交わす以外、ごはんに行ったりラインなどで近況を報告し合うことはほとんどなかったそう。今回、取材という改まった場所で、それぞれが辛いこと、悔しいことを経験してきたことを初めて知って、驚いていました。お互い何も言わないし知ろうともしない。ただプレーを見て、「負けてられねえ」と奮戦してきたことで大きく成長できるんだから、見栄って大事なんだなあ、つっぱることが男のたった一つの勲章なのだなあ(嶋大輔)とつくづく思いました。

 

このページは写真、デザイン、記事、全部含めた「雑誌」としての良さを出せた、自分にとってもとても大切な企画となりました。変則的な取材を快諾していただいた各チームの顧問の先生方、二度も集まってくれた3人に、改めてお礼を申し上げます。

 

新人戦特集の今号でしたが、新人戦も本日無事閉幕しました。厚木東と元石川がまずは頂点に立ち、新たなシーズンがまた始まります!!

ウインターカップを振り返る(後半)

ウインターカップで寄稿したウェブ記事のまとめ(おまけコメントつき)、後半です。

→前半はこちら

 

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桐光学園ではもう一本、食育サイト「アスレシピ」にて記事を書きました。食に興味がない高校生が、あるきっかけからお母さんと二人三脚で頑張って食べるようになった、という話。こんなに食べることに消極的な人間がいるのかと聞けば聞くほど驚愕でした。本人の話は大会前に聞き終えておき、お母様には試合後に体育館の外でお話をうかがいました(負け試合の後だったにも関わらず、快く取材を受けてくださったことに改めて感謝です)。無理矢理ここの記事でも書きましたが、とてもユニークな選手なのでぜひ上まで勝ち上がったところでドーンと記事を書きたかったというのが本音。また大学以降に持ち越しかな。宣言してくれたこと、忘れないよ(忘れてそうだな…)。

 

 

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何もできずに敗れたインターハイから、冬は素晴らしいチームバスケットで勝ち上がってきた土浦日大。その中心で頑張ってきたであろう菅原キャプテンにフォーカスした記事にしようと目論んでいたのですが、コメントがうまく取れず掘り下げに失敗。瞬発力不足を痛感しました。

 

 

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下級生の時から立派な体格でひときわ目立つ存在だった田村選手。千葉の予選後、近藤先生から「ウェイトダウンして走れるようになった」というお話を聞いて以来、俄然気になっていました。大好きなアレ(くわしくは記事を読んでね)を絶って減量に成功したと話してくれた、今年のチームの"太陽"。もっと長い時間をかけて追いかけたら、もっと面白い話が聞けたんだろうなあと残念しきりです。バスケットボールキングのYさんは、一連の記事の中で最も気になった選手だと言っていました(笑)。

 

 

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アスレシピに寄稿した食事関係のもの。毎年圧倒的に身体の強い桜花学園が、何をどう食べているのかを聞きました。徹底しています。予想以上でした。遠征のときの食事の組み方はもっと突っ込んで聞いてみたかったなぁ。これはトップリーグでも言えることのような気がしますが、コンディショニングに関しては女子のほうが一歩先を進んでいる印象。Bリーガーメシはある程度取材したので(こちら)、今年はWリーガーメシにも手を伸ばしたい!

 

 

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私のように特定のチームでなく大会全体を追いかける取材陣のあるあるだと思うんですが、上位進出がある程度堅いチームは、どうしても取材を後回しにされる傾向があります(勝ち上がる限り、試合を見たり話を聞くチャンスは続くわけですから)。そして気付くと「あれ、このチームのことを全然見ていない・・・」とあわてるわけです。てなわけで、どうしたもんかなと考えた末に決勝のプレビュー色の強い記事にしました。東山ももっと見ておきたかったチームだった。オフェンス至上主義の潔さが割と好きな人間です。

 

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大倉選手も小室選手も引っ張りだこだろうなと思ったので、応援席で見かけた大倉選手のお兄ちゃん(彼らの先輩)の話を軸に書いた記事。ちょっとポイントを絞るのに失敗したかなと印象。「3年生」をもっと掘り下げるべきだったなと今さら反省です。「別にシューターというわけではない」と言いながら、大会で一番3ポイントを決めた高田選手のことも盛り込みたかった。重ね重ね反省。

 

 

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"雑草"と表現してもいいだろう高校生たちの軌跡を記事にしました。留学生をとる前年だったかのインターハイで、福大大濠にものすごく食い下がったことが今でも強く印象に残っているチーム。留学生がいなくても地元っ子主体でも、しっかり地力があるチームなんでしょうね。異彩を放つピチピチ半袖ユニフォームについては「ゆるいのを着ると逆に不安になる」的な話が聞けました(笑)。

 

 

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各媒体がこぞって取り上げることは取材の仕方から一目瞭然。本人たちが「もうやめてくれ」オーラを出しているのも分かっている。しかし、それでもやはり書きたかったツインズの話題。記事中にあるように大学もまた同じところに進むのですが、その理由を聞き忘れたのが悔やまれます(まさかまた「親にすすめられたから」とは言わんだろう)。何はともあれ、大会のフィナーレとなる1本を「これから」の雰囲気を匂わせて締められたことは、個人的に満足しているところです。Life goes on.バスケットボールもまだまだ続くのである。

 

今大会はさまざまな媒体でさまざまな記事が掲載されました。同じ選手、チームを取り上げた記事であっても、書き手によって掘り下げるポイントは千差万別。読み比べるのも面白いと思います。

例えば青木崇さんの記事は戦術や海外事情への深い造詣がうかがえますし、清水広美さんの積み重ねた取材量は、誰も追随できません。今猛烈にバスケットを勉強中という噂の平野貴也さん(サッカーメーンで取材活動をされています)はコメントの引き出し方が上手で、熱い。名前は出してないけどJBAのレポートの担当者も、それぞれ独自の視点から大会を切り取っています。

振り返りとなる月刊バスケットボールの発売日も近づいてまいりました。ぜひまた、記事や映像を読み返して、あの東京体育館の余韻に浸ってみてください。

ウインターカップを振り返る(前半)

安野モヨコさんの「働きマン」という漫画で、主人公の週刊誌編集者がお父さんにこんなことを言われるシーンがあります。

 

「たいして知りもしないのに記事にして、人様に迷惑かけるんじゃないぞ」

 

たいていのメディアの人間は、圧倒的に物事をよく知りません。なぜなら当事者でも関係者でもないからです。当事者たちだって隠したいこも思い出せないこともあるでしょう。そこからなんとかして正しいことを掘り出して記事にし、当事者たちのかわりに情報を伝播するという仕事。改めてその責任の重さに吐きそうになりながら、このブログを書いています。

 

例年だと昨年の大会やカップ戦、インターハイや国体の取材の蓄積でわりとスムーズに書けていましたが、一昨年のウインターカップ以来全国大会に足を運んでいない身なので、今回のウインターカップ期間中は何度も何度もこのお父さんの言葉が頭に浮かんで、「うっ…」と胸を押さえました。事前情報を舐めるように読み、試合を凝視し、最大10数分という短い囲み取材で(注目度の高い監督や選手には下手したら1つくらいしか質問できない)自分が書きたい内容に関する正しい情報を、どのような質問を駆使して聞き取るか。大会取材というのは瞬発力勝負ですが、それが圧倒的にない当方はブランクもあってヒイヒイでした。

 

というわけで、どれだけ正しいことに迫れたか改めて不安で仕方がないですが、ウインターカップ関連の原稿を、簡単な取材後記を入れて紹介します。振り返ってみるとわりと大量だったので前後半に分けて。

 

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数年前にJBA関連の取材を担当していた時から知っていた選手。とにかく一生懸命で、コーチ陣や先輩選手にとてもかわいがられていました(一度取材中にカンチョーされててすごい痛そうだった)。これからサイズ面で苦労するでしょうが、持ち前の気持ちの強さを生かして成長することを楽しみにしています。

 

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あちこちのコートを周って「何を書こうか…」と思い悩んだ末に、気持ちのいいディフェンスで勝利をつかんだ盛岡南を。永田渉選手、いい選手でしたね。大学でいっそう飛躍するのではないでしょうか。

 

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「たった1人の3年生、しかもそれがマネージャーってのが気になる」と、大会前からアタリをつけていた根岸マネージャーについて。試合中もひたすら彼の一挙手一投足を見ていました。SNSではかなり反響をいただいたようです。頑張っているのは選手だけでない。マネージャーだって戦っているのだ。

 

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この日の注目ゲームから。事前の取材不足が否めず、取材での突っ込み方が圧倒的にダメだった。不完全燃焼。

 

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上位進出を目された我らが川崎代表の桐光学園は、まさかまさかの初戦敗退でした(育英はとてもいいチームでしたね)。川崎ブレイブサンダースが横断幕に寄せたメッセージや600人超の応援団のことも書きたかったのですが、ちょっと変化球で。ある程度密に取材を重ねていた桐光学園だからこそ書けた記事でした。部員ほぼ全員とケンカしてコミュニケーションを培ってきたという三島選手。ベンチで指揮をとる日はいつになることでしょうか。

 

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能代工業を倒したという話題で書こうかなとアタリをつけていましたが、広報アンケートに書かれた「横手者」という言葉が気になり、たまたまカメラ席で隣にいた地元新聞社の方とお話をしてみたところから、ちょっと抒情的なものを書いてみたいなと思い立ち、こんな記事になりました。こちらもアクセス数がとてもよかったそうです。

 

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東山との戦いで感じたこと、ケガからの復帰、キャプテン交替などなど取り上げたいトピックをうまく集約できず、若干散漫になってしまったかなという印象。柳川選手が魅力的な人物なだけに、取材不足が悔やまれます。

 

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「言葉」にフォーカスした記事。囲み取材で某ライターさん(わりと視点が似ている+あちらは事前取材などでこちらより情報量が多い)と内容が丸被りになりそうな気配を感じ、どうしたものかなと思っていたら、ちょうど隣で山口主将が別の取材を受けていたので、彼のコメントを加えることで独自色を加えました。来年も楽しみな選手です。

 

【後編に続く】

ウインターカップに寄せて(神奈川代表校の話)

ウインターカップ開幕前夜ということで、神奈川男子代表として出場する桐光学園高校の練習を見学してきました。

いやー、ビシッとしまっててよかったですねえ。ピーキングも順調な様子でした。一方でさまざまな「初めて」を経験するがゆえの、初々しく微笑ましい様子もちらほらと。(桐光学園は4年ぶりの出場なので、今いる選手たちにとっては初のウインターカップなのです)

初戦となる25日の試合は、約300人の生徒が応援にやってくるとのこと。また、同じ川崎市所属で、県予選決勝でしのぎを削った法政二高の選手たちも駆けつける模様です。学校の仲間たち、ご父兄、OBたちに加えて、県内屈指の熱さを誇る法政二の部員たちの存在も、選手たちを大きく後押ししてくれることでしょう。

 

桐光学園の初戦

12/25(日)15:40~

育英(兵庫)or大分舞鶴(大分)の勝者@Cコート(東京体育館一番奥)

 

***

1カ月ほど前になりますが、女子代表の旭高校にも訪問しました(「TIP OFF」の取材です)。これまであまり訪問取材の機会がなかったので、選手たちにも色々話を聞けてうれしかったです。特に、楠本選手は試合中はおとなしく見えるけど、けっこうはっちゃけてて面白かったです(笑)。

アンダーカテゴリーのスタッフを務める講武達雄監督がチームを離れることが多い旭は(取材日もそうでした)、監督がいなくても自分たちでしっかり練習を締められるのが強み。現在のJX-ENEOSでのプレー経験を持っている上に、S&Cコーチ、アスティックトレーナーも兼務する西垂水紀世美アシスタントコーチの存在もとっても大きいです。

文字数の関係でちょこっとしか触れられませんでしたが、ケガ予防の対策は特にたくさんの部活生に知ってもらいたいトピックの1つ。どこかでまた紹介できる機会をうかがっております。

大会2年連続出場中の旭。菊地キャプテンは「目標はベスト4以上」とビシッと宣言。新たな神奈川女子の伝統をつむぐためにも、ぜひ高い場所を狙っていってほしいです。

 

◆旭の初戦

12/23(金)9:00~

一関学院(岩手)@Bコート(東京体育館真ん中)

 

***

後輩の指導に訪れていた桐光OBの大学生と話していて改めて思いましたが、人生でどれだけ楽しい、素晴らしい、輝やかしい出来事が待っていようとも、高校3年間の日々は永遠にスペシャルなもののような気がします。大して何も頑張っていなかった自分ですらそうですから、3年間を通して一生懸命頑張ってきた選手たちにとってはひとしおのものでしょう。

緊張もするでしょうが、それすらも楽しく思えちゃえたもん勝ちです(たぶん)! 会場入りから引退の瞬間を迎えるまで、東京体育館で起こるすべてのことを全力で愛おしんでもらいたいです。

 

ウインターカップ2016、いよいよ開幕!!

 

※大会関連の記事はあちこちに寄稿する予定ですが、大会中はバスケットボールキングさんにて男子の原稿を書くことになっています。プレビュー企画もいくつか担当していますので、ぜひご覧いただき、大会をより楽しんで頂けたら幸いです。

井上雄彦先生にインタビューした日(TIP OFF vol.14)

JBA会員向け冊子「TIP OFF vol.14」が発行されました。

 

青木はこの号の取材で、初めて井上雄彦先生にインタビューする機会を得ました。

 

そう、あの、スラムダンクの! スラムダンクの!! 井上雄彦先生!!!!!

 

あまり憧れの存在を持たずにこの業界に入り込んだ自分にとって、井上先生はたぶん唯一無二の舞い上がってしまう系バスケット関係者。

編集さんが誰の取材とは言わず平日夕方からの取材を担当できるライターを探していると言うので、「あ~全然無理っす、他の人に頼んでください」と流したら、

 

井上雄彦先生の取材なんですよね~・・・(チラッ)」。

 

というわけでこの日のために夫に有給を使わせ、万全の体制で当日事前打ち合わせの場に到着すると、やたらとカリカリしている制作陣。なんでだろうと思ったら、単純にみなさん緊張していたのでした。そらそうや。(なんか一人のん気な感じですいませんでした)

 

総勢5人という大勢の取材陣で集英社に入り、大変立派な応接室で待つ。やはり井上先生は偉大なのか、集英社のみなさんもやたら大勢いらっしゃる。ドアが開くたび「すわ先生か」と思ったら別の部署の担当の方だったりして、無駄にドキドキしていた。

 

そして予定の時間より少し遅れて現れた先生! チャ~ラ~!!!!(※効果音)

 

雑誌などで拝見する井上先生は、なんというかすごくパリッとして豪胆なイメージだったけれど、お会いして言葉を交わしてみると、すごくこじんまりとした方でした。世を風靡してブイブイ言わせた大先生とは思えないくらい、物静かで控えめ。お話の合間に差し込まれているラフイラストや文字の雰囲気そのままという感じですかね。怒られるかもしれないけれど、「リアル」のノブのお父さんに似てるなと、真っ先に思いました。

 

同席された集英社の方もスラムダンクファンにとっては超豪華。

今回の取材の窓口となってくださった小菅隼太郎さんは、小学生のときに井上先生にファンレターを送り、その内容が印象的だったおかげで海南大の控え選手の名前(「いいぞ、いいぞ、小菅」の小菅くん)に採用されたというすごい方。それだけでなく、大人になって井上先生と仕事をしているんだから、さらにとんでもなくすごい。自分がその立場になったところを想像したら鼻血が出そうです。

インタビューの様子を後ろからこっそりとのぞかれていたナイスミドルは、スラムダンクの初代編集さん。おそるおそる「あ、あの、週刊バスケットボールの中村さんですか…?」とうかがうと「そうです」と笑顔で答えてくださいました。相田弥生さん(彦一のねーちゃん)にどつかれ、つまんなそうに鼻くそをほじっていた「週刊バスケットボール」の中村記者のモデルとなった中村さんが目の前にいるとは…。この日一番の興奮したのは、実はこの瞬間だったような気がします。

 

取材はなんともスムーズに、和やかに進みました。段取りどおり時間どおりにマストの質問項目を消化しつつ、先生が横浜対川崎を見に行ったときの話や、比江島選手のキャラについてワハハと笑い合ったりしました。取材終了後には「先生:八村君はやっぱりレッドシャツなんですかね」「青木:噂ではそう聞いてますよ(実際は違ったけど)」などと、普通に雑談までしました。

 

編集さんに「青木さん、物怖じしなくてよかったっす」と言われたけど、なんというか普通を取り繕っていたけど異常に現実味がないというか、終始ふわふわしっぱなしの妙な時間でした。 

先生と別れ、集英社の方と別れ、制作班とも別れ、一人になると途端に吐きそうになったので、「ふわふわ」は緊張だったんだなとようやく実感。家に帰って飲んだビールは、人生で一番おいしかったです。

 

これまでにもイベントや試合会場に先生がいらっしゃっていて、知人がサインをもらったり握手をしてもらったと聞いて、うらやましいなと思っていた。でもこうやって仕事で先生にお会いして、(一応)対等な立場でインタビューできたこの日は、自分の人生においてとても大きな記念日になりました。

サインも握手も写真もないけれど、紙面で使えなかったスラムダンクの裏話や連載時の先生の思いは、いつかどこかで書ける日が来るまでは自分だけの宝物にします。

 

もうかれこれ2時間くらいこのエントリを書いているけど、最後。当日先生に言えなかったことを、こっそりここに書いて終わりとします。

先生、スラムダンクがあったから私もバスケを好きになれました。人生を懸けて頑張れるものに出会えました。本当にありがとうございました。ちなみに一番好きなキャラクターは豊玉の南です。色紙をもらえるような日が来たら、ぜひ南を書いてやってください(カリメロバージョンと2パターンで)。