ブルーノオト

国内バスケットボールをメインフィールドに活動中。フリーのライター/編集者、青木美帆のブログです。

井上雄彦先生にインタビューした日(TIP OFF vol.14)

JBA会員向け冊子「TIP OFF vol.14」が発行されました。

 

青木はこの号の取材で、初めて井上雄彦先生にインタビューする機会を得ました。

 

そう、あの、スラムダンクの! スラムダンクの!! 井上雄彦先生!!!!!

 

あまり憧れの存在を持たずにこの業界に入り込んだ自分にとって、井上先生はたぶん唯一無二の舞い上がってしまう系バスケット関係者。

編集さんが誰の取材とは言わず平日夕方からの取材を担当できるライターを探していると言うので、「あ~全然無理っす、他の人に頼んでください」と流したら、

 

井上雄彦先生の取材なんですよね~・・・(チラッ)」。

 

というわけでこの日のために夫に有給を使わせ、万全の体制で当日事前打ち合わせの場に到着すると、やたらとカリカリしている制作陣。なんでだろうと思ったら、単純にみなさん緊張していたのでした。そらそうや。(なんか一人のん気な感じですいませんでした)

 

総勢5人という大勢の取材陣で集英社に入り、大変立派な応接室で待つ。やはり井上先生は偉大なのか、集英社のみなさんもやたら大勢いらっしゃる。ドアが開くたび「すわ先生か」と思ったら別の部署の担当の方だったりして、無駄にドキドキしていた。

 

そして予定の時間より少し遅れて現れた先生! チャ~ラ~!!!!(※効果音)

 

雑誌などで拝見する井上先生は、なんというかすごくパリッとして豪胆なイメージだったけれど、お会いして言葉を交わしてみると、すごくこじんまりとした方でした。世を風靡してブイブイ言わせた大先生とは思えないくらい、物静かで控えめ。お話の合間に差し込まれているラフイラストや文字の雰囲気そのままという感じですかね。怒られるかもしれないけれど、「リアル」のノブのお父さんに似てるなと、真っ先に思いました。

 

同席された集英社の方もスラムダンクファンにとっては超豪華。

今回の取材の窓口となってくださった小菅隼太郎さんは、小学生のときに井上先生にファンレターを送り、その内容が印象的だったおかげで海南大の控え選手の名前(「いいぞ、いいぞ、小菅」の小菅くん)に採用されたというすごい方。それだけでなく、大人になって井上先生と仕事をしているんだから、さらにとんでもなくすごい。自分がその立場になったところを想像したら鼻血が出そうです。

インタビューの様子を後ろからこっそりとのぞかれていたナイスミドルは、スラムダンクの初代編集さん。おそるおそる「あ、あの、週刊バスケットボールの中村さんですか…?」とうかがうと「そうです」と笑顔で答えてくださいました。相田弥生さん(彦一のねーちゃん)にどつかれ、つまんなそうに鼻くそをほじっていた「週刊バスケットボール」の中村記者のモデルとなった中村さんが目の前にいるとは…。この日一番の興奮したのは、実はこの瞬間だったような気がします。

 

取材はなんともスムーズに、和やかに進みました。段取りどおり時間どおりにマストの質問項目を消化しつつ、先生が横浜対川崎を見に行ったときの話や、比江島選手のキャラについてワハハと笑い合ったりしました。取材終了後には「先生:八村君はやっぱりレッドシャツなんですかね」「青木:噂ではそう聞いてますよ(実際は違ったけど)」などと、普通に雑談までしました。

 

編集さんに「青木さん、物怖じしなくてよかったっす」と言われたけど、なんというか普通を取り繕っていたけど異常に現実味がないというか、終始ふわふわしっぱなしの妙な時間でした。 

先生と別れ、集英社の方と別れ、制作班とも別れ、一人になると途端に吐きそうになったので、「ふわふわ」は緊張だったんだなとようやく実感。家に帰って飲んだビールは、人生で一番おいしかったです。

 

これまでにもイベントや試合会場に先生がいらっしゃっていて、知人がサインをもらったり握手をしてもらったと聞いて、うらやましいなと思っていた。でもこうやって仕事で先生にお会いして、(一応)対等な立場でインタビューできたこの日は、自分の人生においてとても大きな記念日になりました。

サインも握手も写真もないけれど、紙面で使えなかったスラムダンクの裏話や連載時の先生の思いは、いつかどこかで書ける日が来るまでは自分だけの宝物にします。

 

もうかれこれ2時間くらいこのエントリを書いているけど、最後。当日先生に言えなかったことを、こっそりここに書いて終わりとします。

先生、スラムダンクがあったから私もバスケを好きになれました。人生を懸けて頑張れるものに出会えました。本当にありがとうございました。ちなみに一番好きなキャラクターは豊玉の南です。色紙をもらえるような日が来たら、ぜひ南を書いてやってください(カリメロバージョンと2パターンで)。